Netflixオリジナル映画『浅草キッド』で主演を務めた柳楽優弥が、
まるで本物の若きビートたけしのようだと話題になっている。
若い世代にとって「北野武」といえば、
「世界のキタノ」と呼ばれる映画監督や俳優のイメージが強いかもしれない。
だが、私にとっての彼は——
漫才コンビ「ツービート」でブレイクし、
『オレたちひょうきん族』の「タケちゃんマン」として活躍した、
お笑い界の大御所だ。
そんな多才な彼の自伝的小説『浅草キッド』を、
劇団ひとりが監督として映画化。
主演の柳楽優弥が“たけし”を演じ、Netflixで絶賛配信中だ。
今回は、この映画のあらすじ・見どころ・感想を紹介したい。
🟨あらすじ:芸人ビートたけし誕生の物語
時は1972年。浅草・フランス座というストリップ劇場に、
芸人見習いとしてエレベーターボーイを始めたタケシ。
そこで出会ったのが、経営者兼座長の深見千三郎(大泉洋)。
彼に弟子入りし、芸人としての生き方を学び始める。
「笑われるんじゃない、笑わせろ。」
深見は、芸人としての誇りと美意識を何より大切にする人物だった。
その姿勢に強く影響を受けたタケシは、やがて漫才の世界へと活路を見出していく。
舞台コントに情熱を注ぎ続けた師匠とは対照的に、
テレビという新しいメディアで人気を集めるタケシ。
テレビを嫌い「幻の浅草芸人」と呼ばれた深見と、
新時代に羽ばたく弟子——。
二人の間には、いつしか芸人としての生き方の違いが生まれていく。
やがて「ビートたけし」誕生へとつながる、知られざる青春の記録である。
🟩 見どころ:師弟愛と時代の変化が胸に迫る
映画全体を通して流れるのは、亡き師匠への深い感謝の気持ち。
たけしにとって、「世界のキタノ」の原点はすべて師匠・深見にあった。
「全部、師匠から教わったことだよ。ありがとう。」
この想いが画面のすみずみまで染み込んでいて、胸が熱くなる。
また、師匠・深見を演じる大泉洋が見事。
面倒見がよく、口が悪く、不器用な昭和の職人気質を絶妙に表現している。
さらに、1960〜70年代の浅草の情景を再現した美術と照明が圧巻。
舞台からテレビへ、そしてテレビから配信へ——
時代の変化そのものを、Netflixというプラットフォームが逆説的に描いているのも印象的だ。
🟦 柳楽優弥の圧巻の演技
監督の劇団ひとりから「モノマネはしなくていい」と言われていたという柳楽優弥。
しかし実際の演技は、まるで本物の若きたけし。
首の動き、間の取り方、視線の鋭さ。
自然すぎて、もはや“再現”というより“憑依”に近い。
特殊メイクによる外見の完成度も高く、
最初と最後のシーンでは「本人登場か?」と思うほど。
あらためて俳優という職業の凄みを感じさせられる。
🟩 脇を固める俳優陣の存在感
- 門脇麦 … 昭和のノスタルジーを感じさせる存在感。
- 鈴木保奈美 … やつれた雰囲気の中にも漂う美しさ。
彼女たちの静かな演技が、物語に深みを与えている。
🟨 感想:昭和の熱を思い出す一本
1947年生まれの北野武は、今や74歳。
映画監督として世界的な名声を得た今も、
この作品からは“芸人・たけし”としての魂が感じられる。
タップダンスのシーンでは、
師匠との絆と、芸人としての誇りを象徴しているように思える。
言葉に頼らず、姿勢で伝える。
そんな昭和のコミュニケーションには、今では希少な“熱”があった。
ご本人もこの映画を見て泣いたという。
昭和の情景、浅草の灯り、芸の魂——。
消えゆく文化への鎮魂歌のようにも感じた。
7年の構想を経て完成させた劇団ひとり監督。
彼の今後の作品にも大きな期待が寄せられる。
🎞 まとめ
Netflix映画『浅草キッド』は、
「芸人とは何か」「笑いとは何か」を改めて考えさせてくれる作品だ。
昭和を知らない世代にもぜひ観てほしい、
魂が宿る人情ドラマである。


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