はじめに
電気炉のトラブルを調べていると、「電磁波」という言葉に行き着くことがあります。
今回この記事を書くきっかけは、実際に起きた出来事でした。
高圧鉄塔の近くに住んでいるという生徒さん宅の電気炉で、設定通りに制御されず、高温になりすぎるというトラブルが発生したのです。
ヒーターの断線もなく、コントローラー自体の故障とも断定できない。
そこで浮かんだ疑問が、
電気炉そのものではなく、
外部の電磁環境が制御系に影響した可能性はないのか?
この記事では、恐怖を煽るためではなく、
**トラブルが起きたときに「どこを確認すればいいのか」**を整理します。
結論から|電気炉は電磁波で暴走するのか
結論を先に書くと、
- 電気炉のヒーターが電磁波の影響で勝手に強くなることはありません
- しかし、制御系(コントローラー・センサー)は外部ノイズの影響を受ける可能性があります
今回のテーマは、前者ではなく後者です。
電気炉の仕組みを簡単に整理する
電気炉は大きく分けて、次の3つで成り立っています。
- 加熱するためのヒーター
- 温度を検知するセンサー(熱電対など)
- 温度を判断してON/OFFを指示するコントローラー
このうち、最も繊細なのがセンサーとコントローラーです。
外部の電磁波が影響するとしたら、どこか
高圧鉄塔や強い電気設備の近くでは、
「電磁波が怖い」という言い方をされがちですが、
実際に問題になりやすいのは、
- 電磁波そのもの
- というより**電磁ノイズ(EMI)**です
特に影響を受けやすいのは、
- 熱電対の微弱な信号
- 長く引き回されたセンサーケーブル
- アースが取られていない制御系
ノイズが混入すると、
コントローラーが
「実際より温度が低い」
と誤認し、
結果として加熱が止まらず、高温になりすぎることがあります。
「鉄塔がある=危険」ではない理由
ここは重要なポイントです。
高圧鉄塔の近くに住んでいるからといって、
必ず電気炉が誤作動するわけではありません。
実際には、
- 炉の設置位置
- 配線の取り回し
- アースの有無
- 周辺で使われている機器
これらの条件が重なったときに、
影響が表に出やすくなると考える方が現実的です。
トラブルが起きたときの切り分けポイント
電磁波を疑う前に、次の点を確認します。
- 熱電対が正しく設置されているか
- センサーケーブルが電源線と並走していないか
- アースは確実に取られているか
- 延長コードやタコ足配線を使っていないか
- 近くで溶接機・大型モーターなどを使っていないか
これだけでも、
原因をかなり絞り込めます。
ガラス作家の視点で見る|結果から原因を読む
電気炉のトラブルを判断するとき、
ガラス作家だからこそできる重要な観察があります。
それは、電気炉を開けた瞬間の作品の状態をよく見ることです。
もしガラスが割れていた場合、まず観察したいのは割れ口です。
- 割れ口が再び熔けて丸みを帯びているか
- それとも鋭く、冷たい断面のままか
この違いから、
- 焼成の途中で割れたのか
- 最高温度後なのか
- 徐冷(アニール)中に起きたのか
おおよそのタイミングを推測できます。
割れ口が熔けている場合は、
高温域でのトラブルが疑われます。
一方、割れ口が熔けていない場合は、
冷却過程や徐冷不足の可能性が高い。
これは、
コントローラーの誤作動なのか、
プログラム設定やアニールの問題なのかを切り分けるための、
とても重要なヒントになります。
ガラスは嘘をつきません。
結果を観察することで、
電気炉の中で「いつ」「何が起きたのか」を、
後から読み解くことができます。
本当に注意すべきこと
電気炉の事故で多いのは、
- 電磁波による健康被害
ではなく、
- 制御異常による過焼成
- 想定外の高温による破損や火災リスク
です。
だからこそ、
「怖いかどうか」ではなく、
構造と結果を結びつけて考えることが重要になります。
まとめ|判断材料を増やすということ
- 電気炉自体が電磁波で暴走することはない
- ただし、制御系は外部ノイズの影響を受ける可能性がある
- 高温トラブルは、センサーと配線から疑う
- 環境要因は”単独原因”ではなく”条件の一つ”として考える
不安を感じたときに、
「まずここを見ればいい」と思えること。
それが、電気炉と長く付き合うための、
いちばん現実的な安心です。

