若い世代にとって「北野武」は「世界のキタノ」と呼ばれる映画監督や、俳優で浸透しているのではないだろうか?
私にとっては、漫才コンビ「ツービート」であり、オレたちひょうきん族の「タケちゃんまん」で活躍したお笑いの大御所だ。
多才な彼の自伝小説「浅草キッド」を劇団ひとりが監督となって映画化。主演は柳楽優弥。
Netflixで絶賛配信中だ。
この映画のあらすじや見どころ、感想などを紹介したい。
浅草キッドのあらすじ
1972年夏(約50年前)、浅草フランス座というストリップ劇場に芸人見習いとしてエレベータボーイを始めたタケシ。
経営者兼座長の深見千三郎に弟子入りし、【お笑い】を学ぶ。
『笑われるのではなく笑わせろ』。
深見は芸人としての生き方に対して独自の美意識を持っており、タケシもこれに影響されながら成長していく。
幕間のコントに執着していた深見とは対照的に、タケシは、漫才を主軸に活動の場を放送媒体に移し、人気を博していく。
東八郎、萩本欽一など多くの人気芸人を育てながら、テレビを嫌ったために当時の映像もほとんど残っていないことから「幻の浅草芸人」と呼ばれた師匠、深見や仲間たちとの日々。
芸人ビートたけしが誕生するまでの秘話。
浅草キッドのみどころ
映画全体に流れる亡き師匠に対する感謝の気持ち。
「世界のキタノ」の礎となる根幹の部分は全部師匠から教わったことだよ、ありがとうっていう想いがひしひしと伝わってきて胸が熱くなる。
師匠もまた、昔の職人気質ではないが面倒見がいいくせに口が悪いから、言いたいことが言えない、そういう性格を大泉洋が好演している。
古き良き時代。
夢を持つ若者が、下積みを経て苦労し、試行錯誤しながらスターになっていくサクセスストーリー。
そして、舞台演劇からテレビが主流になっていく時代に何を選び、何を捨てるべきか。
そんなことを考えつつ、映画館から、家庭に映画を配信していくサービスへと変えているNetflixが制作しているというのが皮肉に感じた。
1960年代から70年代の浅草の様子を見事に再現していて、お金のあるNetflixじゃないと、もうこんな良質な映画を作れないんだよなぁってね。
最初と最後の映像は本人登場かと思うほどの特殊メイク。
柳楽優弥は劇団ひとり監督に物まねしなくていいからねって言われていたそうだけど、完コピかっていうくらい似ていた。
首の動きだとか自然過ぎて、改めて俳優って凄いなぁと思った。
脇を固める女優たちも好演。
門脇麦の昭和ノスタルジックな雰囲気も素敵だし、鈴木保奈美のやつれた感じさえもが美しかった。
浅草キッドを見て
1947年生まれのたけしは現在74歳。
金獅子賞など映画監督として世界に名高い彼の若き頃や背景を知れてよかった。
時折、タップダンスの披露があるが、師匠との強い絆を感じることで安心したり、気持ちを奮い立たせたりと、彼にとって深い意味があることが推測される。
ご本人もこの映画を見て泣けたそうだが、言葉の力だけに頼らない昭和のコミュニケーションって熱いものがあるけど、消えゆく文化なのかもしれない。
7年の構想を経て映画化したという劇団ひとり監督の今後の作品にも期待。
彼の独特な切り口の映像が楽しみだ。
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