【映画レビュー】「影裏(えいり)」を観て

私は時々、亡くなった家族を思い出して泣きます。

ふいに、声を上げてしまうのです。

喪失感に包まれて、そこはかとない孤独を感じる瞬間です。

日頃そうした瞬間を持つ自分にはとても共感できる静かな映画でした。

目次

映画「影裏」あらすじ

公式サイトはこちらから

今野は、転勤で、岩手県盛岡市に引っ越しする。

慣れない土地で出会った同い年の同僚、日浅。

二人はお酒を飲んだり、釣りに行ったりと親交を深めていく。

ある夜、釣りに出かけた二人は、ささいなことで険悪なムードになり、日浅は

「知った気になるな。お前が見ているのはほんの一瞬光が当たったところだけってこと。
人を見る時は、その裏っかわ、影のいちばん濃いところをみるんだよ。」

と言い残す。

その後、日浅は突然会社を辞めてしまう。

その後、再会するも、以前のようなふたりにはもう戻れなかった。


それから数か月後、同僚の女子社員から日浅にお金を貸していた、もしかしたら日浅が死んでしまったのではないかと告げられる。

今野は日浅について消息を調べ始める。

そしてそこには自分が知らない日浅の顔があった。

一緒に過ごした彼の『本当』はどこにあるのか?

映画「影裏」感想

光と影、表と裏。
どちらも片方だけでは成立しない。
だけど「恋心」は違う。
いくら想ったところで同じだけの力で返ってくることはない。
誰もが知っている感情。

ひとりきりの日常に、すっと入り込んできた一人の男。
型にはまらない、自由な人。
自分にはない何かを持っている人。
ひとつひとつのしぐさや言葉が特別なひとつひとつに変わる。
でも自分の領域には入れなかったし、男の領域に近づこうともしなかった。
それが「光の部分だけではなく、影の部分も知ろうとしろ。」
に繋がると思う。
皮肉なことに、言葉にしなくてもお互いの「影」に惹かれあった。

喪失感。
隣に誰かいても遠く感じることがある。

近くにいる時には、わかっているつもりだったのに、実は男のことを何も知らなかった。
急にいなくなっても、連絡をとる術もなく、生きているのか、死んでいるのかさえわからない。
経歴詐称していたと父親から聞き、お金を貸していたと同僚から聞く。
果たして自分が見てきた男は「いた」んだろうかとさえ疑問に思えてくる。

知り合いに契約やその増額を頼むって、結構勇気のいることだ。
その人に良く思われたい時はなおさら。
(契約を勧めること自体別に悪いことではないし、その人のためになるかもしれないからこの考えは間違っているとも思う。)
それでも、知り合いでない飛び込み先でノルマを達成すれば頼む必要がないと思う時点で少し腰がひける。
負い目を感じる。
だから面と向かって頼みにくかったのかもしれない。

もしかして、この一本の契約があれば震災の起きた地に行かずに済んだかもしれない。
行方不明にならなかったかもしれない。

でも、その自署に、男が確かに「いた」ことは確認できた。
点と点が繋がる瞬間。

生と死。
(うわ、これは飛躍し過ぎかな。)
どちらも、確認がとれない。
でも、確かにそこに「いた」。
その記憶は誰にも消せない。

いつか川に逃げたニジマスを、今度は自分の手で逃がした。
男はまたいつかひょっこり現れる。
喪失感を埋めてくれるのは時間だけだ。

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映画「影裏」詳細

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原作:沼田真佑(第157回芥川賞受賞作品)
監督:大友啓史
脚本:澤井香織
出演:綾野剛/松田龍平/筒井真理子/中村倫也  他

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